フロントエンドとバックエンド Webサイト構築における効果的な連携とは？
Webサイト構築においては、フロントエンドとバックエンドそれぞれで開発や制作を進めたうえで、ひとつのWebサイトに統合されることも少なくありません。しかし両者をスムーズに連携するためには、基本的な連携方法を理解しておく必要があります。
今回は、Webサイト構築におけるフロントエンドとバックエンドの基本的な役割と双方の連携方法、連携に必要なスキル、最適なWebサイト構築を実現させるためのポイントを紹介します。
フロントエンドとバックエンドの基本的な違い
フロントエンドとバックエンドの連携を解説する前に、フロントエンドとバックエンドの基本的な違いについて解説します。
フロントエンドとは？
フロントエンドとは、Web開発においてデザインなどのUI（ユーザーインターフェース）の設計・実装を担う領域のことです。デザイナーやバックエンドエンジニアと連携し、UX（ユーザー体験）を最適化するUIを構築することが役割です。
フロントエンドエンジニアはユーザーが直接見て触れる部分の色やレイアウト、フォント、アニメーションなどを駆使して構築します。使われる主な技術はHTML、CSS、JavaScript、そのフレームワークで、バックエンドとの連携においてはReactやVue.jsといった高度なフレームワークが重要な役割を果たします。
バックエンドとは？
バックエンドとは、Webサイトやアプリケーションの裏側にあるデータベースやサーバー側の仕組みを指し、サーバーサイドとも呼ばれます。
バックエンドではNode.jsやDjango、Ruby on Railsなどのフレームワークとデータベースを駆使してデータ処理やサーバー管理、ユーザー認証（セキュリティ）などを担います。フロントエンドや外部システムと連携するAPI（Application Programming Interface）の設計と実装を行うことも、バックエンドエンジニアの重要な役割です。
フロントエンドとバックエンドを分ける理由
小規模開発ではフロントエンドとバックエンドを分ける必要性はそれほど大きくありませんが、規模の大きい開発においては両者を分離することで得られるメリットが多くなります。理由は以下のとおりです。
- 専門性が異なるため
- 拡張性が損なわれずに済むため
- 同時進行で開発できるため
- テストプロセスを効率化できるため
専門性が異なるため
デザインとHTML/CSS中心の開発を行うフロントエンドと、大規模システムなどを開発するバックエンドでは必要なスキルセットが異なります。両者は使用する言語やフレームワーク、ディレクトリ構成も異なり、双方のエンジニアがお互いの技術を習得して開発に臨めるのが理想ですが、あまり現実的ではありません。
両者を分けて開発することでエンジニアが個々の領域に専念できるため、一体で開発するよりもスピーディーな開発が可能になり、高いユーザー体験を実現しやすいといえます。
拡張性が損なわれずに済むため
開発時にフロントエンドとバックエンドが結合されていると、システムの拡張や機能の追加を行う際に統合が困難になりやすいことも、両者が分けて開発される理由です。
統合が難しい原因として、フロントエンドとバックエンドではディレクトリ構成が異なることが挙げられます。例えばVue.jsで書かれたプログラムとLaravelで書かれたまったくディレクトリの異なるプログラムを統合することは、現実的ではありません。
また、Webサイトの改修は技術変化の速いフロントエンドのみで発生する機会も多いため、フロントエンドとバックエンドを分離して開発するほうがメンテナンスも容易です。
同時進行で開発できるため
フロントエンドとバックエンドを分けて開発することで、双方のエンジニアはお互いの進捗に捉われず個々の領域に集中でき、同時進行で作業を進められます。
例えばフロントエンドの開発体制のみでUIを構築できたり、バックエンドでAPIを開発している間に、フロントが事前に決めたAPIモックアップで開発したりすることも可能です。結果としてプロジェクト全体の進捗が向上し、工期短縮にもつながります。
テストプロセスを効率化できるため
フロントエンドとバックエンドを分離して開発することで、それぞれのテストを独立して行うことができるため問題やバグを早期に発見でき、テストプロセスが効率化されます。
フロントエンド・バックエンドを一体で開発すると、テストプロセスが複雑化しやすい問題が生じます。双方を分離して開発すれば開発とテストの領域が限られるため、不具合の原因の特定が行いやすく効率的なデバッグとテストが可能です。
フロントエンドとバックエンドを連携するAPI
分離して開発されたフロントエンドとバックエンドは、最終的に1つのWebサイトへと統合される必要があります。ここでは両者を連携する効果的な方法を紹介します。
フロントエンドとバックエンドを連携するAPIとは
フロントエンドとバックエンドを結合するもっともポピュラーな方法は、バックエンドでAPI（Application Programming Interface）を提供し、フロントエンドがAPIを呼び出してデータをやり取りするという方法です。
APIとは、複数のアプリケーションが情報をやり取りするための接点となる仕組みのことです。フロントエンドとバックエンドの間で行われるデータのやり取りや、イベント通知などにAPIが使用されます。
クライアントからのリクエストをサーバー側へ伝え、レスポンスを返す際の形式やルールは、RESTful APIやGraphQLなどのAPIごとに決められています。フロントエンド・バックエンドの連携が不十分だとユーザーエクスペリエンスが損なわれたり、システムのパフォーマンスが低下したりする恐れがあるため、それぞれの特徴を理解し、開発目的によって使い分けることが必要です。
API①RESTful API（Representational State Transfer API）
RESTful APIとは、RESTの原則に基づいて設計されたAPIのことで、フロントエンドとバックエンドの間でデータをやり取りするための一般的な方法です。RESTful APIには以下の4つの原則があります。
- アドレス可能性（Addressability）
- ステートレス性（Stateless）
- 接続性（Connectability）
- 統一インターフェイス（Uniform interface）
HTTPの標準メソッドを使いURLからリソースにアクセスするため、通信が容易なことがRESTful APIの特徴です。対象のリソースは「/api/user」「/api/user/1」のようにURLで表現されており、HTTPで定義するGET（取得）、POST（作成）、PUT（変更）、DELETE（削除）などのメソッド（リクエスト）を使って、どのリソースに何の処理をするかを指定します。
ステートレスでシンプルなAPIのため、効率的な開発が行いやすいことがRESTful APIのメリットです。HTTPメソッドやJSON形式といった一般的なWeb技術を用いるため、開発も容易で学習コストも高くありません。
ただしデータ取得の最適化が難しく、データセットが大規模な場合リクエストが複雑な場合には必ずしも効率的とはいえません。また、エンドポイントがわからないとアクセスできない点もデメリットといえます。
以上を踏まえ、軽量なREST API は以下の開発に適しています。
- IoT (モノのインターネット)
- モバイルアプリケーション開発
- サーバーレス・コンピューティング
- アクセスの集中しやすいアプリケーションの開発
API②GraphQL
GraphQLはFacebookによって開発されたAPIのクエリ言語で、APIを通じてデータの取得や操作を効率的に行うための手法です。RESTful APIのデータ取得上のデメリットを解消するために設計されたAPIです。
クライアントがリクエストするデータの型を指定できるため、過剰なデータをやり取りせず必要なデータだけを効率よく取得でき、バグに気づきやすいなどの利点があります。1つのエンドポイントで複数のデータを取得できることや、複雑なデータ構造に対応していることもメリットです。
ただし汎用的なRESTに比べてナレッジの蓄積が少なく、学習コストが高いことが難点です。比較的新しい規格でライブラリも少なく、クエリの複雑さによりサーバーサイドの実装が困難な場合があります。
GraphQLが適しているのは、高頻度に仕様が変わるデータを扱うプロジェクトや、サーバーとクライアント間のコミュニケーションコストを重視する以下のようなアプリケーション開発です。
- ソーシャルメディアプラットフォーム
- ECサイト
- チャットアプリ
- モバイルアプリ
- マイクロサービスアーキテクチャ
API連携手法③SOAP（Simple Object Access Protocol）
SOAPは、World Wide Web Consortium (W3C) が管理するXML（データを構造化するためのマークアップ言語）ベースの公式プロトコルです。1990年代後半に異なるシステム間での情報交換をスムーズに行うために設計されました。
Webや軽量なAPI通信に使用されるHTTPに対し、SOAPはエンタープライズ向けの複雑で構造化されたデータの通信で多く使用されています。
SOAPのメリットはトランザクション管理やセキュリティ、信頼性が求められる開発に強い点です。ただしXMLベースで構造が複雑なためページの読み込みに時間がかかる点や、習得難易度が高い点はデメリットといえます。
最近はRESTful APIやGraphQLが主流となっていますが、SOAPはセキュリティやトランザクションを重視する金融系の企業間通信の開発などでは現在でも多く活用されています。
フロントエンドとバックエンドの連携に必要なスキル
ここではフロントエンドとバックエンドを効率的に連携するために必要なスキルを紹介します。
フロントエンドエンジニアに必要な連携スキル
フロントエンド・バックエンド連携でフロントエンドエンジニアに求められるスキルは以下のとおりです。
- HTML / CSS / JavaScript の深い理解
- フレームワーク（React, Vue.js, Angular）の活用
- APIの活用とデータ取得（Fetch API, Axios）
- パフォーマンス最適化（Lazy Loading, Webpack, CDN）
バックエンドとのスムーズな連携のためには、UI構築に特化したReactや、柔軟・簡潔な設計ができるVue.jsなどのフレームワークを駆使した開発スキルが欠かせません。
JavaScriptで非同期処理を行うためにはHTTPクライアントライブラリAxiosが必要です。HTTPリクエストを行ったうえで、レスポンスを処理する JavaScript インターフェイスFetch APIも習得しておきましょう。
ページのロード時間を短縮するLazy Loadingや、リスエスト数を削減できるJavaScriptモジュールバンドラーWebpackなどを使いこなせば、連携の効率化につながります。
バックエンドエンジニアに必要な連携スキル
フロントエンドとの連携において、バックエンドエンジニアには以下のスキルが求められます。
- サーバーサイド言語（Node.js, Python, PHP, Ruby, Javaなど）
- フレームワーク（Node.js、Djangoなど）
- データベース管理（MySQL, PostgreSQL, MongoDB）
- API設計（REST, GraphQL）
- セキュリティ対策（認証、データ保護）
- パフォーマンス最適化の知識
- クラウド環境の知識
- CI/CDツールの活用
API設計がバックエンドで行われるため、フロントエンドよりも幅広い知見とスキルが求められます。バックエンドでは、データを取得したり送信したりするためのエンドポイントも提供しければなりません。
JavaScriptの実行環境Node.js は、ブラウザ上でしか動作しないJavaScriptをサーバーサイドで動作させることができるため、フロントエンドとの連携に活用されています。セキュリティやデータベースの管理に使われるDjangoのスキルや、データベース言語のスキルもAPI連携には不可欠です。
開発工程を効率化するためのCI/CDでテストとデプロイ自動化スキルも身に着けておきましょう。
フロントエンドとバックエンドを効率的に連携するポイント
最後に、フロントエンドとバックエンドを効率的に連携するポイントを紹介します。
チーム間のコミュニケーション方法を決めておく
スムーズな連携のためには、開発チーム内でフロントエンドとバックエンドのコミュニケーション方法やタイミングを決めておく必要があります。分かれて開発するため、APIの取り決めや仕様についての擦り合わせが必要になるためです。
フロントエンドとバックエンドを結合する際には、以下のステップごとにスムーズな連携が求められます。
- バックエンドでAPIを構築する
- フロントエンドからAPIを呼び出す
- CORSの問題に対処するためCORS設定を行う
- POSTリクエストでデータを送信する
- サーバー側でデータベースに保存もしくは処理する
全体の進捗管理が難しくなり、プロジェクト全体の遅延が生じる可能性もあるため、チャットツールやプロジェクト管理ツール（Slack, Notion, Jiraなど）を活用し、リアルタイムのコミュニケーションを欠かさないよう留意しましょう。
定期的なミーティングや双方のコードレビューを行うことも大切です。
通信とデータ管理を最適化する方法を知る
通信とデータ管理を最適化する多角的な方法を知ることも、フロントエンド・バックエンド連携の重要なポイントです。具体的には以下の方法が選択可能です。
- データ圧縮
- キャッシュの活用
- 非同期通信の活用
API Gateway コンソール、AWS CLI、 AWS SDKなどを使用してデータを圧縮することで、通信帯域を節約し送受信時間を短縮できるため、パフォーマンスが向上します。
また、アクセス頻度の高いデータをキャッシュに保存することで、アクセスのたびにサーバーへリクエストする必要がなくなり、読み込み速度が向上します。
非同期処理を行えば他の処理を止めずに処理できるため、ユーザーインターフェースの応答性を高めることが可能です。例えば、データベースから情報を取得するような時間のかかる処理中にはパフォーマンスが低下しやすくなりますが、送受信を非同期にすることで回避できます。
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Webサイト構築においてフロントエンドとバックエンドを分離して開発し、シームレスに連携することは、ユーザーの満足度向上につながります。ただしフロントエンドとバックエンドのスムーズな連携には、APIなどの高度な知識とスキルが不可欠です。
両者の連携においてデータの通信と管理の最適化が行われれば、エラーや遅延のないスムーズな連携が可能です。
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