Webエンジニアなら知っておきたい 2024年の開発トレンド【フレームワーク編】
Webエンジニアとしてキャリアアップを図るために、Web開発のトレンドをもっと押さえたいという方が多いのではないでしょうか。世界的な社会情勢の変化とともに、Webの世界でも技術の進化が加速しています。数年前には予測もしなかった開発トレンドが生まれる可能性もあり、定期的にチェックが必要です。
2024年のWeb開発トレンドシリーズの2回目「フレームワーク編」では、Web開発フレームワークのトレンドを紹介します。
Web開発フレームワークとは?
Web開発フレームワークとは、Webアプリケーション開発に必要な機能や基本的な骨組みをまとめたツールボックスのようなものです。事前に完成された土台に、必要最低限のプログラムを記述するだけでアプリケーションを作れる「開発効率化ツール」として活用できます。
フレームワークを使えば開発工程を短縮でき、コードの記述も統一されるため、改修や機能追加の簡易化も可能です。フレームワークにはフロントエンド・バックエンドの2種類があります。
フロントエンドフレームワーク |
バックエンドフレームワーク |
|
役割 |
ユーザーインターフェースの構築 |
サーバーサイドロジックおよびデータベースの処理 |
機能 |
※開発者が効率的にプログラムを書き、保守や追加開発をしやすい枠組みを提供する |
※サーバーサイドのオペレーションを処理 |
言語 |
JavaScript、TypeScript |
Python、Ruby、JavaScript |
データバインディング |
双方向データバインディング、リアクティブデータバインディング |
主にサーバーサイドでのデータ処理 |
主なフレームワーク |
React、Vue.js、Next.js、Angular、Bootstrap、Ember |
Ruby on Rails、Django、Laravel、Flask、Express、Node.js、ASP.Net、Spring、Core |
フロントエンドフレームワーク
フロントエンドフレームワークは、基本的なテンプレートとコンポーネントを備え、フロントエンドを開発するための基盤として機能する枠組みです。
以下のフレームワークの機能を活用すれば、UI/UX設計が容易になり、Webアプリの機能性とインタラクティブ性(双方向性)を高められます。
- ファイル構造化を効率化するコンポーネント
- 魅力的なヴィジュアル構築のためのUI設計
- コンポーネントのテーマや特定のスタイリングの実装
- SEO最適化
- パフォーマンス最適化
- 拡張性の最適化
主なフロントエンドフレームワークにはReact、Vue、Bootstrap、Ember、Angularなどがあります。
バックエンドフレームワーク
バックエンドフレームワークは、Webアプリ開発を単純化・スピードアップするために設計・記述されたコードやライブラリ、ツールを集めたものです。データベースやWebサーバー、OSにおいてオペレーション処理をサポートする以下の機能を持ちます。
- ルーティング
- データベース統合
- ユーザー認証
- API管理 など
フロントエンドフレームワークと異なる点は、セキュリティや保守を最適化する要素を含むことです。アプリやサイトの開発には、セキュリティやデータベースに関するさまざまな手続きを踏まなければなりません。バックエンドフレームワークを活用すれば手続きを簡易化できるため、開発者はアプリの機能構築に注力できるのです。
主なバックエンドフレームワークはRuby on Rails、Django、Express、ASP.Net、Spring、Coreなどです。
フロントエンドフレームワークの2024年のトレンド
ここからは、2024年の開発トレンドとなっているフロントエンドフレームワークをチェックしましょう。
- React
- Vue.js
- Angular
- Next.js
React
Reactは、ユーザーインターフェースの構築に特化されたJavaScriptライブラリで、再利用可能なコンポーネントと高速なレンダリング性能が特徴です。Meta社(旧Facebook社)によって開発されました。
Reactではコンポーネント単位でパーツを作るため、それぞれのコンポーネント内で処理が完結し、管理や再利用が容易になります。
また仮想DOMにより、Webページの内容を更新する際に更新部分のみを変更でき、大規模なアプリケーションでも効率よくUIの更新が可能です。
Reactのメリット
- 高いパフォーマンス
- 大規模なコミュニティを持つ
- 優れた開発者ツール
- 再利用可能なUIコンポーネント
Reactのデメリット
- 習得が困難
- 完全なアプリケーションの構築には追加のライブラリが必要
JavaScript Rising Starsのトレンド調査では、Reactは2021年~2023年のJavaScriptエコシステムのトップに君臨しています。
Vue.js
Vue.jsはWebインターフェースの構築に使われるプログレッシブJavaScriptフレームワークです。簡単なHTMLベースのテンプレート構文で、コンポーネントの構成とデータのリアクティブを可能にします。
Reactと同様に仮想DOMを採用し、パフォーマンスを最適化できるため、対話型UIやアニメーション付加、SPAの構築などにおいて特に人気です。Vue.jsは優れたパフォーマンスと高い柔軟性により、小規模から大規模プロジェクトまで幅広く採用されています。
シンプルな構文で学習しやすい点もVue.jsの特徴です。
Vue.jsのメリット
- シンプルで習得が簡単
- 高速パフォーマンス
- 再利用可能なUIコンポーネントの構築に向いている
- 規模が小さい
Vue.jsのデメリット
- 他のフレームワークよりコミュニティが小規模
- 大規模開発には不向き
- サードパーティライブラリのエコシステムが限定される
先述のReactが大規模・複雑なプロジェクトで採用されることが多いのに対し、Vue.jsは初学者や小規模プロジェクトで採用される傾向があります。
Angular
Angularは、TypeScriptベースのフルスタック開発に使えるフレームワークです。Googleによって開発され、SPA開発では特に威力を発揮します。
Angularは短いコードで動作を記述できることが特徴で、開発の効率化につながります。一方で堅牢な構造と豊富な機能を持ち、プロジェクトの多様な要件に対応が可能です。
またAngularで開発されたWebアプリケーションは、ブラウザが起動する端末ならどのプラットフォーム・OSでも使用できるため、OSごとの動作確認が不要なことも特徴です。
Angularのメリット
- 大規模なコミュニティ
- 優れた開発者ツールセット
- 大規模アプリケーションの構築に向いている
- 包括的なドキュメント
Angularのデメリット
- 習得が困難
- コードベースが大規模
- 他のフレームワークよりパフォーマンスが遅い
個人向けサービス開発に多く使われるReactに対し、Angularは企業向け大規模開発に採用される傾向です。
Next.js
Next.jsは、SSR(サーバーサイドレンダリング)やSSG(静的サイト生成)を簡単に実現できるReactベースのフレームワークです。高い柔軟性と使いやすさが特徴です。
React の利点を活かしながら、より高速でUXに優れたWebサイトを容易に構築できることがNext.jsのメリットです。ユーザーフレンドリーな静的Webサイト・アプリケーションを構築できるため、SEOにも効果を発揮します。
React単体ではページ遷移の実装に追加のライブラリが必要ですが、Next.jsならページ間のリンクを自動的に作成してくれます。
Next.jsを使えば大規模なエンタープライズ級のアプリケーションもスピーディーに構築でき、本番環境にもデプロイが可能です。
Next.jsには他にも以下の特徴があります。
- 事前に HTML を作成できる
- 必要なコードだけを読み込む
- CSS を簡単に書ける機能がある
- バックエンドとの連携が容易
Next.jsはVercelのJavaScriptフレームワークの中では1番の人気を誇り、デジタル庁のサービス紹介サイトにも採用されています。
バックエンドフレームワークの2024年のトレンド
続いて、2024年のトレンドとなっているバックエンドフレームワークを紹介します。
- Laravel
- Django
- Flask
- Ruby on Rails (Ruby)
- Node.js(JavaScript)
Laravel
Laravelは、MVCモデルを採用したPHPベースのWebアプリケーション開発フレームワークです。PHPを扱うシステム開発に採用されることもあります。
シンプルな構文と拡張性の高さ、使いやすさが特徴で、MVCの採用により分業開発がしやすいことも人気の理由です。簡単なコマンドのみでデータベースのテーブル構築ができます。
インストール時にユーザー管理やログイン機能なども得られるため、予約サイトや自社ECサイト、SNSの設計・開発、さらに大規模開発にも活用されています。
Eloquentという独特のデータベース操作・管理手法を採用していますが、慣れればSQLより容易にデータを扱えるでしょう。
Laravelのメリット
- 習得が簡単
- 大規模なコミュニティ
- プログラムの拡張性が高い
- 大規模アプリケーションの構築に向いている
- ドキュメントが充実している
Laravelのデメリット
- 他のフレームワークよりパフォーマンスが遅い
- 他のフレームワークより柔軟性が限定的
Laravelを活用できる主なサービス・サイト
- 業務システム
- ショッピングサイト
- 交通機関や宿泊施設の予約サイト
- 掲示板や口コミサイト
- SNSサービス
- ブログサービス
- チャットアプリ
Laravelは近年もプラグインの開発や細かいアップデートが繰り返されており、将来性は高いといえます。人気のフレームワークのため情報量も豊富です。
Django
Djangoは、Pythonで実装されたオープンソースのフレームワークです。高品質なWebアプリケーションを簡単に、少ないコードで作成できます。
Angularと同様のフルスタックフレームワークとして、ユーザー認証やコンテンツ管理、サイトマップ、RSSフィードといったWeb開発に必要な基本機能がそろっています。
パスワードをハッシュ化しデータベースに格納するなど、独自のセッション情報やパスワードの管理方法による高い安全性もDjangoの特徴です。
またPythonベースのため、Djangoで開発されたWebアプリケーションもLinux・Windows・mac OSなど、プラットフォームを選ばず動作が可能です。
Djangoのメリット
- 優れたドキュメント
- 大規模アプリケーションの構築に向いている
- 組み込みの管理インターフェース
- 優れたセキュリティ機能
Djangoのデメリット
- 他のフレームワークと比べ柔軟性が限定的
- 初心者には習熟が困難(インターネット上にノウハウは多い)
Djangoを活用できる主なサービス・サイト
- コンテンツ管理システム
- Wiki
- Instagramなどのソーシャルネットワーク
- ニュースサイト
Flask
Flaskは、Pythonベースで軽量かつ柔軟に設計されたWebアプリケーションフレームワークです。シンプルで使いやすく、優れたパフォーマンスが特徴です。
Django(ジャンゴ)は大規模かつ複雑なWebアプリケーション開発向けのフレームワークであるのに対し、Flask は小規模かつ自由度の高いWeb アプリケーション開発向けといえます。プロトタイプ開発などに多く活用される傾向があります。
Flaskは機能がシンプルで使いやすく覚えやすいため、Python初心者向けのフレームワークとしても知られています。
Flaskのメリット
- 習得が容易
- 軽量
- 柔軟性がある
- 小規模から中規模のアプリケーション構築に向いている
Flaskのデメリット
- 他のフレームワークと比べ機能が限定的
- 拡張性が限られている
- 大規模向け拡張機能が搭載されていない
- ドキュメントが英語メインで日本語対応が少ない
Ruby on Rails (Ruby)
Ruby on Rails(Railsの略称でも呼ばれる)は、Rubyで書かれたフルスタックのWebアプリフレームワークです。
「設定よりも規約」の原則により、手動でのセットアップや設定の工数を削減している点が特徴です。シンプルさとスピード感、スケーラビリティを優先するRailsは、既存企業だけでなくスタートアップやベンチャーにも愛用されています。
MVCアーキテクチャの採用により保守・再利用が行いやすい点、データベースとのやり取りを簡素化する「Active Record」というORMが含まれている点も特徴です。日本人が開発したRubyがベースで構造もシンプルなことから、初心者が学びやすいのもメリットといえるでしょう。
Ruby on Railsのメリット
- スピード感を持った開発が可能
- 高い汎用性(OSを問わず使用が可能)
- 学習しやすい
Ruby on Railsのデメリット
- 実行速度が遅い
Ruby on Railsを活用できるサービス・サイト
- eコマース
- SaaS(Software as a Service)
- マーケットプレイス
- ソーシャル・ネットワーキング・プラットフォーム
- サーバーサイドアプリケーションの開発
- リアルタイムのウェブアプリケーションの作成
- 通信プログラム
- ブラウザゲームの開発
Node.js(JavaScript)
Node.jsとは、Webページ作成などの際に使われるJavaScriptをサーバー側で動作させるオープンソースフレームワーク(実行環境)です。JavaScriptは通常Webブラウザ以外では動作できませんが、Node.jsを使えばサーバー上でも動作できます。
通常はフロントエンド・サーバーサイドで異なる言語を使用しますが、Node.jsを使えばクライアント・サーバー両サイドで共通のスクリプトが使えます。記述をJavaScriptで統一できるため、開発負担の軽減が可能です。
さらに機械学習やスマホアプリにもJavaScriptを利用できるようになり、開発の幅を広げられます。
Node.jsの特徴・メリット
- コード実行速度が速い
- 非同期I/Oで大量アクセスにも対応可能
- シングルスレッドでリアルタイム処理が可能
- パッケージング、スレッド処理、ループの形成など、Javaと同様の特性
- 動画やオーディオのバッファリング問題を解消できる
Node.jsのデメリット
- 対応するサーバーが少ない
- 特定イベントの処理の重さによって時間がかかる場合もある
Node.jsが対応する主な開発領域
- リアルタイムアプリ
- APIの構築
- Webサーバーの構築と運用
- Webアプリやスマートフォンアプリの開発
- IoT分野の開発
フレームワークの選び方
フレームワークを選択する際には以下の点を考慮しましょう。
- 使いやすさ
- 拡張性
- 相互運用性
- コミュニティサポート
- セキュリティ
- パフォーマンス
プロジェクト固有のニーズや要件に適したフレームワークを選択することが大切です。
使いやすさ
チームで開発を効率化するためには、フレームワークの使いやすさは重要な要素です。
- 習得しやすいか
- 明確なドキュメントがあるか
- 直感的に使用できるか
学習コストが高いフレームワークは導入後の問題解決に時間を要する可能性もあるため、慎重に検討しましょう。
拡張性
アプリケーションの成長に合わせ、機能を拡張できるかどうかもフレームワーク選びの重要な要素です。
トラフィックやユーザーの増加が見込まれる場合は、パフォーマンスを下げずに大規模なプロジェクトに対応できるフレームワークを選ぶ必要があります。
バックエンドフレームワークはロードバランシング、水平スケーリング(サーバーの追加)、分散コンピューティング(複数のマシンにタスクを分散)をサポートするフレームワークを選択しましょう。
相互運用性
最新のWebアプリはサードパーティサービスやAPI、ライブラリと統合するケースが多いです。
相互運用性を促進し、プロジェクトで今後必要となりそうな他のプラットフォームやテクノロジーとのシームレスな統合を可能にするフレームワークを選びましょう。
コミュニティサポート
活発なコミュニティがあれば、トラブルシューティングやナレッジ、フレームワークの改善に関する豊富な情報が得られます。
コミュニティが活発で規模が大きいほど、最新のアップデート、バグ修正、ベストプラクティスの情報を得やすいです。
セキュリティ
高度化したWebアプリの開発では、以下のセキュリティ機能が組み込まれているかどうかも重要です。
- クロスサイトスクリプティング(XSS)や攻撃SQLインジェクション攻撃からの保護機能
- 安全なユーザー認証と認可の実装を容易にする機能
パフォーマンス
ユーザーエクスペリエンスを最大化するうえで、パフォーマンスは最大限重視すべきポイントです。
ユーザーエクスペリエンスの低下は企業収益の悪化にもつながります。高速で信頼性が高く、大量のリクエストを速度を落とさず処理できるかどうかをチェックしましょう。
Web開発トレンドのフレームワークで開発を効率化しよう
社会ニーズの変化にともないWeb開発のニーズも変化します。企業ではWeb開発のスピード化・効率化を図ると同時に、ユーザー体験の向上も追及しているため、双方を実現するフレームワークの選択が必須です。
Web開発フレームワークは進化を続けているため、トレンドは常に入れ替わります。Webエンジニアは常に社会情勢やトレンドをキャッチし、時代のニーズに合った新しいスキルの習得を心がけることが大切です。
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