生成AIのサイト制作ツールでWebディレクターの仕事はどう変わる?
生成AIとWebディレクターの仕事の関係は、新たな局面を迎えそうです。2015年、野村総合研究所から「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」とのレポートが発表され、話題になりました。
ChatGPTのプロトタイプが公開されたのは2023年11月。近年は、生成AIツールによるWebサイト制作も可能になり「Webディレクターの仕事もAIに代替されるのでは?」と危惧している方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、生成AIを活用したサイト制作ツールで、Webディレクターの仕事が今後どのように変わっていくのかをご紹介します。
Webサイト制作で生成AIができること
生成AIを活用したサイト制作関連ツールが、近年進化し、ワイヤーフレーム、コンテンツ、記事テーマ・タイトルなどのプロトタイプを簡単に作れるようになりました。現在の生成AIでWebサイト制作に使える機能としては、主に以下のものがあります。
- テキスト作成
- テンプレート作成
- 画像作成
- 自動バックグラウンド削除・自動拡張 など
現時点でChatGPTと画像生成ツールだけでも、簡単なWebサイトなら作れてしまいます。
サイトのデザインを簡単に作成でき、ロゴやバナーをはじめ、LPまでを短時間で制作が可能です。テキストで指示出しをするだけで、10秒ほどでページを作成してくれるので、配置や構図を参考にしてサイトを作成することが可能です。
数十秒でアイデア出しが完了し、Webサイト制作全工程の時短を図れるため、上手に活用すれば、従来よりも短納期での納品も可能になります。
制作工程だけでなく、AIはクライアントの業務内容や業界調査も行えます。さらにWebサイトのリニューアルの際に、コンテンツ案を調査するために、ChatGPTなどを活用することもできます。
生成AI活用サイト制作をする際の注意点
このように幅広い業務を代替できる生成AIですが、苦手な仕事もあります。
- クライアントの想いを汲むことができない
- 指示出しに技術や知識が必要
- 生成したコンテンツの情報が誤っている場合もある
- 新しい情報を得られない
- ゼロからのアイデア出しはできない
- データを分析できるが戦略は立てられない
クライアントの想いや要望を汲み取ることは、生成AIには不可能です。担当者の好みや、クライアントごとに決められたブランディングやデザインのルールに、AIが応えられるかというと、現段階では困難でしょう。
また、AIがサイトやコンテンツを生成するためには、詳細な指示出しが不可欠で、使う側にもAIへ指示を的確に伝えるための知識と技術が必要です。
高精度のアイデアを出したい場合は、具体的な条件や詳細な情報、明確なペルソナ、参考例といった多くのヒントを与えるなど、回答の精度を高める工夫が求められます。
さらに生成されたコンテンツは、信憑性を判断して作られているわけではありません。内容が誤っている場合もあるため、必ず検証を行わなければなりません。
生成AIのバージョンによっては、過去の情報が得られないため、時系列を追った情報の編集や取りまとめには不向きといえるでしょう。
なお生成AIは、過去のデザインを学習して生成するため、ゼロからのアイデア出しや斬新なデザインの生成はできません。
データ分析に関しても、手動よりはるかに速く行えますが、分析結果をもとに戦略を考えるタスクはまかせられません。
生成AIにできずWebディレクターだけができる仕事
生成AIの苦手項目から考えると、AIにできずWebディレクターにしかできない仕事は以下の要素を持つ職務です。
- クリエイティビティ・創造性の必要な仕事
- 顧客のニーズをふまえたプロジェクトの計画
- 進行管理・マネジメント
- コミュニケーションによる関係構築
クライアントの要望をヒアリングし、Webサイトに反映するための企画・提案・設計・ディレクションは、現在のAIにはできない仕事です。
各工程を円滑に遂行するためのコミュニケーション能力と課題解決力も、Webディレクターにのみ備わっていてAIには代替できないスキルといえます。
AIは過去のデータを分析できても、将来を予測して計画を立てるのは不可能で、中長期的な戦略を立てるのは、Webディレクターの仕事です。
クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションや関係構築も、経験を積んだWebディレクターでしか成し得ません。
チームメンバーのストレス軽減を図りながら、サイトで実現したいことを理解させ、プロジェクトを円滑に進行できるのも、ベテランWebディレクターだからこそできることです。
多くの仕事がAIに代替されると予想した野村総合研究所のレポートでも「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」としています。
さらに「人工知能等による代替可能性が低い職業」の中に、ディレクター業が選ばれていたことからも、Webディレクターは生成AIに代替されにくい職種と考えてよいでしょう。
生成AIによりWebディレクターの仕事は上流へシフト
今後、Webディレクターと生成AIは、分業しながら制作を進められるため、Webディレクターはよりクリエイティブな仕事を守備範囲とすることになります。
ワイヤーフレームのキャッチコピーなど、アイデア出しのサポートならばAIのサポートを受けられます。
ただし、出たアイデアをそのまま使用せず素案として活用し、最後はWebディレクターやライターがまとめ上げるというフローになるでしょう。
それでも、生成AIによりWebサイトのデザインやコーディングを自動化できれば、Webディレクターは企画と設計に注力できます。
さらにWebサイトのアクセス解析や効果測定も自動化できる可能性があり、Webディレクターはデータに基づいたマーケティング戦略をタイムリーに立案することが可能です。
生成AIをWebサイト制作に活用することで、今後Webディレクターの仕事は上流工程へとシフトしていくことになりそうです。