事業会社か?制作会社か?Webディレクターの活躍の場を考える①事業会社編
Webディレクターの活躍の場は、自社のサイトやサービスで事業の成果にコミットする「事業会社」と、さまざまなクライアントの仕事を請け負う「制作会社」とに分かれます。それぞれに特徴があり、転職でどちらを選ぶか迷う人も多いでしょう。
この記事では、事業会社と制作会社のメリット・デメリットを2回にわたって解説します。第1回は「事業会社編」です。
将来のキャリアを見据えて押さえておきたいことや、転職する際の会社選びのポイントもあわせて紹介するので、転職やキャリアアップの参考にご活用ください。
事業会社のWebディレクターとは?
事業会社とは、自社でWebサービス・Webメディアを運営し、収益を得ている会社を指します。飲食チェーンやホテルなら予約サイト、小売業やIT系の企業は製品・サービスの販売サイト、人材系の企業は求人情報サイトや派遣の登録サイトなど、ビジネスモデルもサイトの目的・形態もさまざまです。
事業会社におけるWebディレクターのミッションは、Webサイトの運用・改善で自社のビジネスを成功に導くこと。事業に関わるサイト全体のディレクションを行う組織のマネージャーは、会社の業績を左右する重要なポジションといえます。
主な仕事は自社サイトの制作・運用・更新、プロジェクト推進、外部パートナーのアサインとディレクションなど。Webサイトの制作のみならず、日々の運用をまかされることも多く、ひとつの事業やサービスに長く携わるのが制作会社との違いです。
各工程に対する専門性よりも、連携する社内の部署や外部パートナーなどを的確に動かすマネジメント力が重視されるケースが多いのも、制作会社と異なります。
事業会社のWebディレクターになるメリット
事業会社では、自社事業を成長させるためにWebサイトを活用しています。Webディレクターにとっては、それぞれのプロジェクトが比較的長期で、関われる範囲が広いのも特徴のひとつです。まずは、事業会社で働くメリットを紹介しましょう。
自社の事業やサイトを育てている実感が持てる
事業会社のWebサイトは、自社のブランディングやサービスの利用促進を目的としています。自社メディアや事業を育てている実感が湧き、やりがいを感じられる仕事といえます。
マーケットや競合サービスの状況を分析して、中長期戦略を立て、アクションプランを立案・実行できるのも事業会社の仕事の醍醐味です。実績を積んでマネジメントに携わるようになれば、サイト全体の方針策定や予算決定の権限を与えられるのも、制作会社にはない魅力です。
ユーザーの評価が直接数値で返ってくる
仕事の評価が数値でダイレクトに返ってくるのも、事業会社のやりがいのひとつです。
Webサイトのアクセスやコンバージョンの数値を収集・分析し、課題を明確にしながら次の施策を推進するPDCAサイクルをまわせるのも、事業会社の醍醐味でしょう。常に目標と達成度を突きつけられるため、シビアな面もありますが、数値が伸びたときの手応えや達成感は格別です。
マーケティングスキルが身につく
事業会社では、自社サイトの実績を高めるために多様な施策を打つので、サイトやSNSの運用、コンテンツ制作、マーケティング、SEOなど幅広いスキルが身につきます。
KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を達成するために、SNS運用やメール配信、リスティング広告などのマーケティング施策を行うと、それぞれの目的に対してどんな施策が有効かが見えてきます。
企業によって関われる領域が変わってくるので、転職する際には自らが求められている役割を把握する必要があります。一見、大手企業のほうが幅広い施策に関われそうですが、実際は分業化している会社が多く、中小企業や小規模な組織のほうが多様な知見を得られる可能性が高そうです。
自社の専門領域の知見が深まる
事業会社では自社サイトの運用とブランディングに長期的に携われるため、Webの知識だけでなく、商材の特性や業界の動向に精通することができます。
例えば、転職サイトであれば人材の動向を把握でき、不動産検索サイトであれば、地価の動向や不動産取引の関連法などを吸収できるでしょう。
こうした特定の業界や領域に関する知見は、Webディレクターとしてキャリアアップしていくうえでの強みになりえます。
長期的なキャリア形成がしやすい
事業会社では制作会社と比べると、長期のキャリア形成がしやすい傾向があります。
大手・中堅企業の多くは、Web部門の組織体制が整っています。事業全体の責任者の下にマネージャー、さらにチームリーダーといった体制が一般的です。
スタートアップ企業や中小規模の制作会社に見られる社長直結のフラットな組織と異なり、組織体系が明確な企業は将来のステップをイメージできるため、キャリアプランを立てやすいといえるでしょう。
事業会社のWebディレクターになるデメリット
事業会社の仕事には、キャリア形成の面で制作会社にはないメリットがある反面、デメリットもあります。
ここではWebディレクターが事業会社で働くデメリットを紹介します。
企業によっては経験の幅が限定される
事業規模にもよりますが、事業会社のWebディレクターは分業化されていることも多く、限られたスキルしか習得できない可能性があります。自社サイトの運用のみで、複数のWebサイトに携わることができない組織では、得られる知識・経験の幅が限定されてしまいます。
担当領域が限定されると、一緒に仕事をするクリエイターやエンジニアも限られるため、制作会社よりもデザインやアイデアのインプットも少なくなってしまうかもしれません。
Webディレクターの仕事に専念できない可能性がある
事業会社ではWebディレクターとしての本業以外の仕事も行うケースがあります。組織階層が確立している分、社内調整や後輩の育成も業務に含まれることが多いようです。
企業によってはジョブチェンジがあり、Web制作以外の部署へ異動となる可能性があることも、事業会社で懸念されるポイントです。
社外の人との接点が少ない
外部のクライアントから仕事を受託する制作会社よりも、事業会社のWebディレクターは社外との接触が少なくなりがちです。
社内だけを見ながら働ける会社なら、制作会社のようにクライアントとのタフな折衝をせずに済むかわりに、自分の成長につながるフィードバックも少なくなってしまうかもしれません。そんな組織に配属された際は、自発的に学習する意欲があるかどうかが問われます。
将来、フリーランスや起業を考えている人にとっては、制作会社と比べて人脈づくりの機会が少ないのもデメリットといえそうです。
Webディレクターの転職で事業会社を見るポイント
Webディレクターとして事業会社へ転職する際には、どのような基準で会社を選べばいいのでしょうか。ここでは、事業会社をチェックする際のポイントを解説します。
会社の理念や事業に思い入れられるか
事業会社では、Webサイトが自社のブランディングやサービスの利用促進を担います。そのため、自社の理念に共感し、商材への思い入れが強いほど、高いモチベーションで仕事に向き合えます。
事業会社では他部署との協働も多いため、社内で一体感を持って仕事ができるかどうかも、会社選びの重要なポイントです。「会社の理念に共感できる」「事業の成長に貢献したい」「チームの仲間と成功を分かち合いたい」「いい組織を創りたい」と思える人は、事業会社向きといえそうです。
年収が仕事量やスキルに対して適切か
転職するなら、仕事・スキルに見合った年収であることも大切な条件です。
会社によっては、Webディレクターには裁量労働制やみなし残業制を導入している場合もあり、さまざまな給与体系があるため、労働条件や評価・昇進の精度、役職ごとに求められるレベルなどについても確認しておきましょう。
事業会社のWebディレクターはキャリア形成しやすいがスキルの幅は限定される
事業会社のWebディレクターは、自社メディアの運用に長期的に携わり、事業を成功に導くやりがいのある仕事です。長期のキャリア形成がしやすく、納期に追われない点もメリットです。
一方で、経験できるスキルの幅が狭まる可能性があること、コア業務以外の仕事があること、人脈形成がしづらいことなどはデメリットといえます。
Webディレクターの活躍の場を考える特集、次回は、制作会社での働き方について紹介します。両方のメリット・デメリットを把握し、自身がより活躍できる場をお選びください。